a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Whiteout(2009)-近年ひさびさの良作品。空間に閉じ込められる人間たち。

Dominic Sena監督。

南極という極限的な環境にあろうがなかろうが、主人公たちはかならず何らかの小空間にとらわれてしまうのであり、例えば氷の分厚い層の中に埋まった輸送機の中であろうと、南極の小基地であろうと、その小さい闇や恐怖をふくむ空間にとじこめられてしまう。それは本人達だけではなく、精神的な心の闇や悔恨といったものまでが、その空間のなかに吸い込まれるようにして結実してしまっている。本作が示しているものは、そういった人間の本来的な閉鎖性というか、もしくは完全に自由に羽ばたいて行動できる者などいないとでも諭すかような制限=非制限性を自由に描写できているが故にすばらしい。

と、まあ蓮實重彦の『映像の詩学』風に感想を書いてはみたものの、実際に本作は近年に稀にみる良作であろうと思う。風景のカメラワークもよいし、「ピッケルを持った匿名の殺人鬼」とでも言えるような恐怖のイメージを作り出すことにも成功している。そしてまた、主人公達を常に拒絶し、困難や制限の空間へと押し込めていたはずの南極という存在が、最期になってオーロラという形で主人公の新しい人生の門出を祝っているという。この叙情的ラストに私は感動したのである。

Kate Beckinsaleが、南極へと到着するや否や、一枚一枚ずつ服をぬいでゆき、外界の南極の雪を連想させるような純白な下着があらわになり、最終的にその下着までも脱いで全裸になる。その確実な段階というものにも、どこか叙事的な美しさがある。