Jeremiah S. Chechik監督。
ジョニー・デップ、変わった役者である。ジョニー・デップではミスキャストなのではないか、と思えるような役ばかり演じて、それが逆に型にはまっているという逆説的な人。つまりはミスキャスティング的な理想の配役とのギャップを、正当化して映画世界内に存在できるような人。彼は明らかにギャップによって魅力を成り立たせている。何をどうすればそのようになるのか、私はまだわからないでいる。くさい演技が成り立つということ、それは映画という表現空間におけるひとつの魅力であり、また不思議でもある。かつて蓮實は映画のことを裏切りの空間と呼んだが、それはどんな役者であっても映画に出演してみなければはまるかどうかわからなく、また優秀な演技者であっても作品によってはその技術が裏目に出て裏切られるということであった。しかし、ジョニー・デップはどうも映画に裏切られないようである。Audrey Tautouと同じで、作品に恵まれている。