Stanley Kubrick監督。
ストーリーがそこに在るにも関わらず、それが観ていてはらはらする面白いものになるかどうかは、一部には映画音楽に何が使われているかに拠るかもしれない。本作は、そこまでドラマティックな音楽を使用していない。本来、年が何世代も離れている少女に恋するロリコン親爺自体と、彼が社会から孤絶していく様子は、不均衡でスリリング以外の何者でもない。しかし、それでも本作が観る人によっては「つまらない」と評価されるのは、映画を盛り上げるような音楽を使わなかったからである。つまり、スリリングさを付加するような、たとえば『サイコ』に使われる不協和な弦の音が、本作をドラマティックに演出した可能性はある。しかし、本人自体が優れた演奏家でもあるStanley Kubrickがその点を誤っておとした筈はなく、自信を持って私は断言するが、監督はあえてドラマティックな演出を控えたということになる。だから、自信をもって「つまらない」と言って良いが、一方でカメラワークの巧みさを堪能する映画であると思う。