Wong Kar-wai監督。
『愛の神、エロス』というぞんざいな和名タイトルがついたオムニバスの中に収録されている、性愛をテーマにした短編である。
Wong Kar-waiは本当によく映画を勉強していることが、作品を観ているとよくわかる。アメリカ映画の良いところ、西欧映画の良いところ、全部取り入れつつ韓国のナショナリティに合うように創意工夫している。この勤勉さにかけてはアジアの他の監督では敵わないのではないか。脚本のおもしろさはハリウッドのように起伏が富んでいるが、一方でカメラが異様に繊細なのだ。
若い仕立て屋が、客の女に手で童貞を捨ててもらうところから始まる。仕立てをするには胴や胸の周りを抱いて測らないといけない。オムニバスのテーマは性愛である。うまいなあと思って観ていると、女は人生を転落していって、最後には娼婦になる。見知らぬ男とやっている女を見て、仕立て屋は帰って仕立ててあげた服に欲情している。仕立て屋として女に童貞を卒業してもらったから、あくまでも仕立て屋としてでしか女に接触できなくなってしまったのだなあ。
女はそして感染症にかかり、最期に仕立て屋を手で奉仕してあげる。男が感極まってキスしようとするのだけれど、感染してしまうから女が手で払いのける。性愛があったのに、結局最後まで純粋な愛情は与えられなかった。
これを40分でまとめているという凄さもある。