Thunder Levin監督。
アメリカ映画。えっ、と思ってしまう今世紀で指折りのポンコツ映画。何からなにまでぽんこつ。
その残念さの際立っているのは敵戦艦のCGがポリゴンであるという。2012年の映画にもかかわらず、90年代でも十分可能であったであろうCG技術に劣っているのである。
あまりにも可哀想になるぐらいの低予算である。
そして、更に残念であったのが、キスシーンの強引さである。アメリカ映画においては適切なタイミングでキスシーンを組み込むことが脚本の力量なのだが、まったくお話にならなかった。
アメリカの戦闘映画では、勝者には栄光をあたえるという精神的性向が暗黙のルールとして存在する。アメリカのお国柄と言ってもよい。そのため、ヒーローは戦闘に勝ったあかつきには何かの栄光が与えられ、大抵はヒロインを獲得することで終了する。つまり、キスシーンは、物語を引き締めて、最終的に幕引きをはかるためのシーンとして機能している。
本作では、確か甲板がゆれて、そのままなだれ込むようにキスシーン。それも、敵戦艦に包囲されているなかで、キャプテンであるヒーローがいきなりいちゃつき始めるのである。私はなんといらいらしたことか。
それで部下は、「仕事に就けー!」と散り散りに持ち場についたが、内心は「見るな見るな、察しろよ」と思っていたに違いない。
ひとつ面白かったのは、本作のヒーローが乗っている戦艦は、博物館行きが決まっていた退役船なのである。
古い船であったが故に、敵戦艦の電磁波攻撃でもダウンすることが無かった。PCなどではなく、真空管を利用して通信しているからである。
そのため、アメリカの最新船団の中で、唯一敵戦艦と交戦できる状態になれた船であった。
この筋書き自体はとても良かったと私は思う。観ていると、罪悪感のある笑いに駆られるが、良くないとは分かっていながらも失笑してしまう出来映えである。
あまりにも低予算・低期間すぎて、この映画自体ほとんど沈没しかけていて、日夜tsutayaの陳列棚からエマージェンシーコールを送っている。