a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

フランケンシュタイン (1931) - talkie古作の秀作

James Whale監督。talkie 最古作の部類に入る。 半世紀以上も年代がはなれると、文化や世界情勢が大きく異なり、映画の存在位置が今と異なる。そのため、秀作とか駄作とかを私がカテゴリーすることには意味がない。

フランケンシュタインという科学者が、犯罪者の脳として「ABNORMAL BRAIN」とラベリングされていた検体をつかって、人造人間を作ったという話。

正常者の脳と、犯罪を犯した物の脳をくらべて、犯罪者の方が前頭葉が凝縮して小さいと述べている。科学的な真偽は不明である。脳の形で犯罪者になるか決めていく議論は、現代の生命倫理には抵触する可能性がある。

この映画は、DNAの二重らせんが判明した50年代よりもはるかに前の映画であるので、細胞や遺伝がなにかわかっていなかった頃である。生命がなにかすらわかっていなかった頃の映画である。

talkieとなって生まれた音の臨場感が重視され、実際に人造人間はあまり恐くない。むしろ恐いのは、勝手に生き物を創り、それを勝手に殺すことを正当化する科学者と大衆なのである。

本作の終幕は、「フランケンシュタイン家に乾杯」と言って終わるので、生命倫理に議論を投げかける意図があったかは疑わしい。今の時代になって深読みして観れば、生命倫理を問いかけているように見えなくもない。

黒作品らしく、かがり火による光と影の演出を意識しているが、あまり巧く撮れているとはいえない。かがり火を手前に配置するだけで、ただ逆光になって見えずらいだけである。せめて壁面に影を投影するようにすればよかった。それは40年代以降に主要の技術であるが、本作はその前時代の作品である。