チャン・イーモウ監督。
序盤の現在のシーンはあえてモノトーンで物語を進める。本来であれば過去をモノトーンにして、現在をカラーにすることが普通なのであるが、本作では過去が主に語りたいストーリーであろうから、あえて現代をモノトーンにしたのだろう。
確か日本にも同じようなのがあったなぁというような典型的なラブストーリー。何回男の方見るねん!という感じで、女が何十回も男の方を見る。純愛が成り立つのは、他の国でも同じなのだなとわかる作品。
この作品は、男の方が愛される素質や美徳があって凄いという性質の話ではない。女の方が、あまりにも純粋で一途であって、ゆえに人を愛する資格や美徳があって凄いという話なのである。なぜ凄いのかといえば、普通一般の人間はここまで出来ないからであって、この映画を見終わったあとに「私もこういう純愛をしよう」となる話ではなく、ただただ終局の後に拍手喝采になる話なのである。
どの時代にも、お手製のきのこ餃子をもって走ったり、高熱の中どこにいるかもわからない男を探しにいったりできる女は、実際にはほとんど居ないわけである。つまりは、どの時代においても、この形式の話がそっくり同じ形で流行りうるのである。考えてみれば、日本でも「いま、会いにゆきます」(2004)が流行ったが、タイムスリップしてしまう以外、懐古形式で女が純愛である点など一切変わりがない。普遍的なのである。
ところで、父親はいったい街でなにをしでかしたんだ?
チャン・ツィイーのデビュー作である。若干20歳。