Xavier Gens監督。
数あるヒットマンが主人公である映画の中で、その名前を冠した映画が本作である。
ストーリーの映し方に無駄があり、画面も単調なのであるが、時々才能があるようなショットが混ざることがある。2丁拳銃使いは非常にかっこ良いのであるが、Timothy Olylphantの撮り方があまり冴えない。後頭部のバーコードを何回も同じような構図で撮り続け、意図のわからない遠景ショットを多様し、映画の撮影法としては不十分なものばかりである。
一方で、女の撮り方だけはやけに上手で、逃亡中にも関わらず女が着ているファッションがどれもセンスに溢れている。逃亡中だからとあえてみすぼらしい服を着させようという気配も無い。どことなくフランスの匂いがしたので製作国を確認したら、案の定フランスの映画で、監督もフランス人だった。しっかりと観れば、2丁拳銃の裏に隠れてOlyphantのネクタイの着こなしも洒落ているのだが、女の衣装は遥かに洒落ている。どう見ても、主人公のヒットマンの方が雑に撮られている。
特に、列車でOlyphantと女が別れるシークエンスなど、女を演じたOlga Kurylenkoはたいそう綺麗に映っていた。Olga Kurylenkoはフランスで活躍しているファッションモデルでもある。ヒットマン系の映画で主人公と逃亡する中で、彼女は平均的な作品で描かれる女よりも明らかに多弁であったし、女の方から男をベットに押し倒して性的に挑発しにかかる構図があったことなど、いかにもフランスらしい。女は精神的に自由で、そして現状の中で非常に楽しもうとしている。フランスの価値観が全面的に、主に女性を中心として発揮されている。この点によって、本作はヒットマン映画として独特な出来映えになっているように私には見える。
ヒットマンが登場する映画のストーリー展開は、主人公であるヒットマンがその敵と決闘し、主人公が勝つという紋切り型である。そのため、ストーリーの映し方が雑であっても、女の見栄えがして、フランスの匂いが漂う本作の方が、私としては意外性があり好みである。ただし、これは好みの問題である。
敵との銃撃をするシークエンスはとても迫力があるので、ヒットマン系映画として要点は良く出来ている。
フランス映画好きとしては、一年に一回観たい作品である。