a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

網走番外地 北海篇(1965) - 日本の「駅馬車」現る。

石井輝男監督。

即興的に繰り広げられていくストーリーが魅力な映画である。見知らぬ人間たちが行く先々でトラックに乗り込む構図は、Stagecoarch(1939)に似ている。目的地へと到着する過程を描くストーリーであるから、道中に行動をともにする登場人物たちの組み合わせが、作品の持ち味を変化させるといえよう。本作がStagecoarchと異なる点は、主人公である高倉健に絶対的な主人公性があり、彼がそれぞれの登場人物に対してどのように接するかに焦点が当てられている点である。その意味で、本作は人情味に溢れているといえよう。自殺未遂をした女を諭したり、囚人時代の友人のために彼の不埒な女房にけじめをつけさせたり、高倉健はいろいろと忙しい。そういった甲斐甲斐しさが成り立つのも、彼が心の軸がぶれない父性をしっかりと保持しているからであり、本作が描いているのは日本人特有の権威的家父長の人情なのである。この”権威的”という特徴はEmmanuel Toddによれば、世界の中で持っていた国は日本やドイツなど限定的である。日本はこの”権威的”な父親の性格が今日失われてきつつあるようにも私には感じられる。そのため、本作を観て古き良き日本を感じる者が在るとすれば、それはやはり本作が「日本版Stagecoarch」として完成させられていることの証明なのである。 

理屈っぽいことを述べてしまったが、刑務所ではおかまが出たり、即興的でユーモアのある展開があり、娯楽がとても高い映画である。そして高倉健は演技が自然であり、非常に巧い。

また、非常にきれいな大原麗子を拝むことができる。