John Ford監督。
本作の題名にもなっている駅馬車に、見ず知らずの人間(多少関係性を持った人間も含まれている)が寄り合い、目的地を目指すという映画。
駅馬車にのっての長旅であるから、途中には音楽で遊戯する人があらわれたり、ロマンスのかけらがふいに現れたりと、非常に現実的なシークエンスが続く。そのため肩肘を張らずに観ることができ、視聴している時間を感じさせぬ良さがある。全体を通して緩急のゆらぎがしっかりと形成されており、同じテーマ曲を時々流してくれることによってシークエンス単位のリズムをきざんでくれる。そう、映画音楽の意義とは、映画世界の中における人間の営みとしての音楽を流すことや、作品にリズムをつけることなのだ。そのリズムとしての音楽の流し方が非常に巧い。
映画の撮り方は写実的で、人物の表情を正面からローアングルで映すことも多い。それぞれの人物の味が出て、また面白いと私は感じて好みの手法なのであるが。
個人的にはアルコール中毒であろう医者Doc Booneが好きである。彼は突然医師として働かなければならなくなり、大量の珈琲を飲んで気付けをして体内のアルコールを排出しようとする。また、物語終局にて大きくはったりをかますことになるのだが、その姿がまた良い。くせ者感が良いのだ。