宮崎駿監督。
日本の民話というか、伝承として残る神隠しについて、独自な解釈を元にストーリーをくみ上げたアニメーション作品。神隠しがどのように行われているのかという解釈がおもしろく、また神隠しから脱出するストーリーもおもしろい。結局、主人公の優しさという美徳が次第に強調されていき、それが物語のさまざまなトリガーを引いて行くので、その意味においては他の映画が構成される際のストーリー展開と変わらない。ただし主人公は自分をなんでも出来る人間だとは思っておらず、あらゆる者に対する偏見を持たず、故に敵を倒すというストーリーにはならなかった。さしずめ敵になりうる登場人物は「湯婆婆」であるが、特段主人公がなにか攻撃を仕掛けるという雰でもない。強いて言えば、子煩悩で、計算高く、意地悪な「湯婆婆」に対して、千尋は礼儀や誠実さを忘れずに表現し、礼節の我慢比べで「湯婆婆」を打ち負かした感じがする。相手と競争をする際に、どちらかの勝利を礼節の高貴さで決するのは、伝統的には決して西洋の辞書にはなく、むしろアジア的であり儒教的なのである。そういった意味で、ラストのシークエンスは非常に日本らしさが出ていた。
嫌に真面目に書いてきたが、アニメーションとして面白く、娯楽要素も強い作品。空間の捉え方が上手である。そして空間表現も凝っている。とても良い。