a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Dancer in the Dark (2000) - ビョークの才能に圧倒されたが、監督の真剣さにも圧倒された。

Lars von Trier監督。

本作の特徴としてjump shotというものがある。なんら難しいことはなく、例えばA地点からB地点へと歩くとき、普通は歩くカットを含めてAからBまで歩くシーンを、A地点から歩き出したカットとB地点へと到着したカットのみで表現する。

このようにして、映画世界における事象の中で、わざわざ観客にみせる必要のないシーンだけ抜き取ってしまう。

Dancer in the darkとは、具体的に指差してしまって良いのであれば、空想のことである。

独房は音がないから、空想のミュージカルが出来ないという観点は、なかなかである。 本作は感性が鋭いのであって、救いが無いという指摘は違うと思われる。彼女は無事に、未来の存在へと光をつないだのであって、一体どこがアンハッピーエンドなのか。多少メルヘンチックな言い方が許されるのであれば、息子が無事に手術を終えたことを理解した瞬間に、彼女の頭の中で鳴るミュージカルはいつまでも終わらないのである。

 

jump gutで時空間をきったら、その飛躍が直感的に観客へ伝わるためには、外の微妙な音と、シナリオの当然の転回が必要である。もしくは、画面の構図や色味が飛躍的に変化していなければならない。飛躍的にとは、「近しい色や、近しい構図ではいけない」という意味である。 もし東京の公園のシーンから、アメリカのどこかの公園のシーンに飛んだら、多少は困惑してしまう。それらの構図が近しい限り。 これがもし、東京の公園からアメリカの海に佇む自由の女神像のシーンに飛んだら、舞台がアメリカに飛んだのだと一発でわかる。

彼女が純粋さの中に、嘘をまぜているという発想がよい。その嘘というのも純粋さから発生したものであるというのが、また的を得ている。つまり、息子を救いたいという純粋さである。