Bernardo Bertolucci監督。
倦怠期にある夫婦を主人公として、彼らが北アフリカへの旅を通して愛情を取り戻そうとする。しかし、夫は途中にて疫病(腸チフス)にかかり命をおとしてしまう。異国情緒にあふれているが、ストーリーは単調であり、主題はある種反省的である。
主人公たちは文化も言語も異なる地に赴き、西欧の通貨すらチップとして通用せず、絶望的なまでに孤立した状況にむかう。この「絶望的なまでに孤立」という状況が重要で、夫婦の距離を縮める、もしくは二人だけの空間を演出するためには、外界から二人だけを遮断してしまう。こう言ってよいのであれば、恋愛映画においては二人を何らかの方法で外界から遮断するために、異国という環境を利用することがある。
さて、主人公のふたりはあえてモロッコへと赴くことで、二人が必然的に向き合う時間を作ろうとする。しかしながら、その目的がほとんど達成されていないまま、ストーリーは別の方向へと転がり込む。二人の時間は、疫病のせいで夫の死とともに終焉し、妻は異国の文化や制度の違いによって死にかける。二人ともに、異国の厳しさに苦しむというストーリーにである。その外界のエスニックな過酷さを過小評価し、また自らが置かれている幸福な現状に対しても、その有限性を過小評価していた。
原作小説の出版年や作品の舞台が半世紀以上も前になるため、多少今から観たらついていけない部分があるかもしれない。小説は1949年の出版で、舞台は1947年である。ストーリーで魅せるというよりは、原作の表現しようとするある観念を描写するための映画かもしれない。
Tangerというモロッコの北部でのストーリーで、ロケーション撮影が綺麗である。画面のほとんどが砂地であるという黄土色の配色に、ふと木々の緑の配色がまざるのも良い。
また、坂本龍一が映画音楽を担当している。なかなか音質がお洒落である。