a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Edward Scissorhands (1990) - 女心をくすぐる、シザーハンズという存在。

Tim Burton監督。

街の古屋敷に住んでいる、孤独な人造人間の話。若干設定は『フランケンシュタイン』に似ていなくもないが、ストーリーの方向はまったく異なる。エドワードを生かして逃してしまうあたり、非常に甘い。現代用にうまくフィットしている。

それに比べて、民衆のおろかさと暴力というのを『フランケンシュタイン』よりもフォーカスし、ひとつのテーマとしている。アメリカ映画が好んで取り上げるテーマに、加害者意識やその反省というものがあるだろう。シザーハンズとは、その反省の総量であり、ファンタズマのようなアイコンでもある。

不適当な比較はよくないが、例えばJean-Luc Godardのカメラワークに比べれば大人と子供ぐらいの違いがある作品。画面の撮り方は単調であるし、なにより奥行きも立体感を出す事にかけては完全に失敗している。ただし、セットの世界観は面白いし、そのセットの中でおこるストーリーにコテコテと映画音楽をのせることには、成功しているように考えた。特に登場人物の感情を表現するのではなく、とりあえず流しているような音楽。この独特の世界観がTim Burtonの良さであるのか。つまり、アイディアで動くようなストーリーであり、映画である。

私なんかは、技術もなければストーリーも途切れ途切れで、なんて無粋な映画なんだと思ってしまうのであるが、主人公のような繊細で一途な性格というものは、女性の心を捉えるものかもしれない。言い換えれば、例えばアメリカにおけるひとつの美徳の典型。何十年にもわたって、若い頃の姿をおぼえていて氷彫刻を掘ってくれるなんで、素晴らしいではないか。そういった性格の主人公をみせられたら、ついつい感動して涙してしまうではないか。だから本作は、映画の歴史において、あるひとつの理想的なテンプレートを示しているのでもある。