a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Notre Musique (2004) - 映画の統合性質を勉強する。

Jean-Luc Godard監督。

物語も良いのだが、映画について勉強させられる映画である。切り返しのショットは基本技術であるが、それによって二つの異なる画面に対象性が発生する。これは私の意訳であるが、その結果としてそれ二つの異質な画面が概念的に統合されることになる。この文脈に拠れば、画面に対象性をもたせるように動く限りは、映画はそれ自身が画面同士を自動的に統合するように働く。一言でまとめると映画とは弁証法的な機械である。

一方で、言葉は対象を分離していく性質があると、本作中において述べられている。私の書いているこの文章にしても、その映画全体について事細かに代弁しているのではなく、その中で私が特に興味を持った部分についてを限定的に抽出しているのであって、映画という対象を極めて分離している。実は、分離せずに映画評論をするということは極めて難しいのであって、まず実行不能である。

映画と小説の違いとは、この二点において得手不得手の領域が明瞭に区別されているのだとわかる。