Paul Verhoeven監督。 記憶の中の物語という、入れ子構造のSF。どうでも良いが、1990年は私の生まれ年である。時代を感じる映画であるが、想像力が豊かで非常に結構。
2010年代の現在では、この類いのシナリオは書きにくいと思っている。わざわざ火星にまでコロニーを作るのに、現地では権力者と貧民の空気をめぐる搾取構造。ほとんど社会主義の権力闘争のようである。せっかく火星にまで行くのに。結局暴力で酸素を奪い取ってハッピーエンド。描いているところは前時代的な階級闘争である。
そういった点で、2010年代の世の中で階級闘争のストーリーが受ける筈がない。冷戦も完全に過去の産物。社会主義は流行らないし、世の中は金による資本主義で決着がついている。
おそらくカズオ・イシグロが述べた通り、資本主義は今後も変わる事がなく、従ってこの手の映画はもはや作られることはないだろう。故に、Total Recallはなかなか貴重な映画なのである。