溝口健二監督。
本来90分ほどの作品として完成したが、戦争でフィルムが失われたのか、現存するものは69分のものである。59年のキネマ旬報社が出した日本映画のベストで2位になった作品であり、当時の世間から絶賛されたことが伺える。
祇園の狭い街並と、家の中をしっかりと撮って、残りはストーリーをしっかりと追うといった形である。
芸子のリアルを描いている。特徴的な事として、女の観点から描いている点で、どのみち女は幸せにはならないので、「芸子なんて商売なかったらええんや」とおもちゃが泣いて終幕となる。
確かに、どうして風俗という商売が続いているのだろうと、ふと疑問提起させられる作品。社会の不条理を映画で代弁しているような形である。
このショットが本作の中で有名になるべき場面であろう。
撮影法としては、晩期の『雨月物語』『西鶴一代女』のように芸術性を突き詰めているようではない。社会の一面を切り取るような作風である。