a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

カンゾー先生 (1998) - 麻生久美子の初ヒット作。すばらしき人間ドラマ。

今村昌平監督。

来院してくる患者は皆ウイルス性の肝臓炎であると決めつけ、独自の研究に固執する医師を描く。国のため、しいては天皇のためと研究を正当化し、脱走兵の肝臓に目を付け、死体を掘り起こす始末。

ところが警ら隊との事件等で、最終的には、地域の人間を視る事こそ医師の本懐と知る。

ある人間の人生観が、ある出来事を契機として変化する。ストーリーの本来的なうまみの部分というのはいつも人間ドラマにある。本作ではそれが堪能できるすばらしい映画である。

ジャズ調の映画音楽もよい。第二次世界大戦下という現実であれば重苦しくてかなわない雰囲気を、軽妙に仕立て上げている。1998年に作らねばならなかった理由はなかろうが、少なくとも2000年以降には作れない雰囲気を持つ作品である。後世に残しておきたい作品である。