Victor Erice監督。
本作は画家の間では有名なようである。なぜなら、現役画家がそのまま主人公として同名で出演しているのである。
本作は、写実画家がマルメロという洋梨を描く過程を、そのまま撮影した映画である。
この監督の作品は、日本で入手できた映像の中で私は全て観ており、
その上で、この作品の感想を改めて回想するのであるが。
スペイン写実の巨匠、などと一部で評されたりもするVictor Ericeであるが、
その一貫したテーマは、すべて「現実的に、死をいかに表現するか」にかかっている。
その逆説的手法として、執拗に"生あるもの"を表現している作品が、本作品である。
カメラワークの綿密さと、テーマの対比に凄みがある。10年に一度ぐらいしか作品を発表しない監督の、長年の思慮が2時間たらずに凝縮されているのだから、観る側としては極上な時間に違いない。