小津安二郎監督。
後の『東京物語』と同じキャストが多い。原節子や笠智衆など。監督も指摘するように、原節子は演技が凄く巧い。比べても仕様がないが、どの時代のどの女優よりも、原節子が一番巧い。どういうところが巧いのかというと、変な話、もっともわざとらしくない立ち振る舞い方をする女優である。
包丁が切れにくくて、「お沢庵が二つにつながったまま」という主題が提示されている。悩み多き女の子である。そろそろお嫁に行ったらと言われ、複雑な面持ちで悩んでいる、という話である。
歌舞伎なのか何なのかよく私にはわからないが、父と観衆にまぎれて演目を観ている中、ひとりうらめしげに周囲をみてうつむくショットが印象的である。
小津安二郎の世界では、昭和の核家族の実際がよく反映されている。大抵は笠智衆が父親で、原節子が子である。毎回このタッグだからこそ、映画にしみ出してくる家族感が出来上がるのかも知れない。 「紀子」というキャラクターは、『東京物語』においても登場しており、同じく原節子が演じている。これは、二つの作品を発表することで、ひとりの同一タイプの人物のバリエーションを表現していると見れなくもない。丁度イヨネスコが発表した劇作における「ベランジェ」と同様の手法であると考えられるということである。