Alain Resnais監督
現実の世の中を映すというよりは、認識論的な、簡単にいえば世の中の不可解な物事について、独特のショットで描いている。世の中は凄く不可解なものとして出来上がっていて、去年マリエンバードで会ってロマンスを経験したはずの女が、今年になって「貴方のことなんて知らない」という態度をとる。これが不可解な物事である。その不可解な世界を写し取るというのが、本作の優れているところである。
感覚論的なようで、懐疑的で、映像至上主義的でもある。これらには関連性があり、映像で示せる事実の確かさに絶対的に依存しているが故に、人間の真理や世の中の物事の普遍的な真理については懐疑的で理解しがたいのである。
私はrationalismよりもemotionalismも方が好きな人間であるが、この映画は合理性よりも感情を描いている。フランス映画は、人間の深層心理の覗いてはいけない深淵を覗けるのだとよく言われるが、まさに本作もその類いに漏れない。
人間の真理の中を覗いてみたい人にとっては、楽しめる映画になるだろう。
近景から遠景を映す独特なショットを得意とする。また音楽が優れている。常に鳴っており、多少騒々しい感があるが、形而上の雰囲気を演出するように努めている。
同じ対象を四回連続で別のアングルから取る手法は、本作が非常に優れている。