a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2000年代 普通 (好みで)

The Cinema Around the Corner (2007) - 両親への愛

Claude Lelouch監督 『それぞれのシネマ』というオムニバス映画の趣旨に一番正直な映画ではないか。他方では虫を殺したり、役者を殺したりとファンタジスティックなものもあるが、Claude Lelouchがどのように育ってきて、どれだけ映画に愛をもっているのかと…

The Gift (2007) - 未開の土地に映画館ができる。

Raoul Ruiz監督 未開の土地に運ばれたひとつのラジオで、その土地に映画館ができたという伝聞の形式の話。

Occupations(2007) - 最悪の映画

Lars von Trier監督 監督が自ら出演して、映画を観ている。隣の男がおしゃべりで気が散るので殺してしまう。それもピッケルで執拗に頭を殴る。とんでもない人である。監督がおしゃべりな役者を殺してしまうのだから、怖い怖い掌編。しかしよく考えると、監督…

It's a Dream(2007) - 遺影と映画

Tsai Ming-liang監督 無くなった家族の写真にもひとつの座席を用意し、家族で映画を観る。遺影にも座席を用意する点が、アジア的発想なのだろうか、もしくは台湾的だろうか。西洋にはこのような感覚は無いだろう。

47 Years Later(2007) - 監督のための映画

Youssef Chahine監督 たった3分の映画で、映画監督の人生を映してしまう良い発想の作品である。仕事としての映画という観点だから、観客から観ればあまり感情移入できない点も否めない。映画業界の裏側をのぞくような心地すらする。

Upsurge (2007) - 騒動の手前を観る。

Oliver Assayas監督 映画館で元恋人のかばんを奪って、携帯電話で連絡をさせる。これが映画館である必要はあるが、映画館を愛している作品であるかどうかは不明である。男はかばんを奪って、映画館のそばにあるカフェバーで待機しているのだから、このあと一…

The Foundry (2007) - 労働者の映画

Aki kaurismaki監督 鋳造所の労働者たちが、6時に仕事を終えて娯楽として映画を観る。なぜリュミエール兄弟の初期の映画なのだろうか。とにかく、本作が描いているのは労働者の慰労や娯楽としての映画。

Artaud Double Bill (2007) - 人間は映画を観る存在である。

Atom Egoyan監督 それぞれ別の映画館で、恋人がそれぞれ別の映画を観ている。恋人が一緒に映画を観るという展開が多いなかで、二人は別々に映画を観て感想を連絡し合っている。観ている映画の中でアンナ・カリーナが『裁かるるジャンヌ』を観ており、誰がど…

Tha Lady Bug (2007) - 虫を倒して上映開始。

Jane Campion監督 映画館に住み着いている調子に乗った女の虫がいる。棒でつつこうとしても逃げられ、床でダンスをしているところを踏みつけても逃げられ、しかし最後にはやられてしまう。面白い映画である。虫を倒すことで合図になったかのように、映画上映…

Movie Night (2007) - 映画とは皆で楽しむもの。

Zhang Yimou監督 村に移動映画館がやってくる。それを子供が楽しいなあ、楽しいなあとはしゃいでいる。そういう掌編である。映画館設備が整っていない地域や昔には、映画は家でTSUTAYAから借りて黙々と観るものではなかった。移動映画館が週や月に一回やって…

Anna (2007) - 映画は恋人と観るもの。

Alejandro Gonzalez Inarritu監督 二人の恋人同士が恋愛映画を観ている。映画とは恋人同士で観るものなのだと言うような作品である。そのうちに女はタバコを吸いたくなった。そして外に出る。男が追いかけて抱きしめる。その瞬間、恋愛映画のロマンチックな…

Absurda (2007) - 映画館のシュールリアル。

David Lynch監督。 スクリーンから鋏が飛び出ているというのが怖い。これは映画館を題材とする『それぞれのシネマ』のオムニバスであるが、むしろ映画館に挑戦状をたたきつけているような気がしなくもない。後の『インランド・エンパイア』のTV番組のシーク…

Darkness (2007) - 暗闇とディテール・ショット。

Jean-Pierre and Luc Dardenne両監督 ディテール・ショットの使い方が上手。暗い映画館で盗みを働こうとした少年の手を、映画に感極まった女が思わず掴むという内容。いい話なのかもしれないが、恐ろしい瞬間が混在している。こういう恐ろしい両義性というの…

The Electric Princess Picture House (2007) - 映画館への感謝の気持ち。

Hou Hsiao-Hsien監督 これは何だろう。観客席に誰一人いない上演である。閉鎖した映画座の記憶の残像を観ている。昔にぎわっていた映画座のショットを出し、次に現在の映画座のショットを出す。本当に現在の時間軸で映画が上映されたのかどうかはわからない…

Diary of a Moviegoer (2007) - 映画監督の映画への愛。

Nanni Moretti監督 映画監督が映画館で思い出について語る。息子とはじめて映画館に行った話、息子が7才になって『マトリックス2』を観に行く話。監督だからいくらでも映画について語れるのである。そこに家族のエピソードが加わるので、我々観客も感情移入…

In the Dark (2007) - 映画は孤独に観るべし。

Andrei Konchalovsky監督 大きいシアターには、上演はされているけれども観客はほとんど入っていない。受付係の女は映画で泣いたけれども、残りの観客のカップルはセックスしていただけ。暗闇でそれぞれの耽溺するものがまったく違った、悲しいなあ。受付女…

Three Minutes (2007) - 3分で何が描けるか。

Theo Angelopoulos監督 映画における独白の台詞は、3分でぎりぎり収めることができると証明したかのような短編。長ったらしく120分に引き伸ばし、無内容の映画なのに感動作に見せようとする駄作映画よりよほど分かりやすい短編なのである。

One Fine Day (2007)- 孤独な人種、監督。

北野武監督 孤独である、監督は孤独な人種なのだと伝えるような映画。キタノ座は北野武が演じていて、ぼろぼろの古い小さなシアターを一人で管理している。観客も一人しかこない。ネガが燃えても誰も助けてくれない、『ニュー・シネマ・パラダイス』と現実は…

Open-Air Cinema (2007) - 映画は仲睦まじく観るべし 。

Raymond Depardon監督 野外映画のたのしさを観る。映画は孤独の中で鑑賞するものではなく、仲の良い人達や恋人同士と仲睦まじく観るものであると言いたいのである。

The Dangerous Thread of Things (2004) - 大自然、もしくは性。

Michelangelo Antonioni 監督。 マセラティのオープンカーに乗って、金がある男だなあと思って観るわけだ。 イタリア人の美の観念というのは、やはり他と隔絶している。日本人は、フランスの美は多少ピンと来るし、その意味で西欧の美的感覚には直感的に応対…

Equilibrium(2004) - 私の嫌いな部類の作品。

Steven Sodervergh監督。 ナンセンスを基調として、均衡であるようで不均衡な作品を作ってくれた。単純なようで複雑な作りにされている映画には、私は観ていてイライラする。それは、一度観て理解できない部分があるので二度観しなければならないからである…

The Hand (2004) - 仕立て屋の性愛を観る。

Wong Kar-wai監督。 『愛の神、エロス』というぞんざいな和名タイトルがついたオムニバスの中に収録されている、性愛をテーマにした短編である。 Wong Kar-waiは本当によく映画を勉強していることが、作品を観ているとよくわかる。アメリカ映画の良いところ…

Shallow Hal (2001) - 二人だけの時間を観る。

Farrelly brothers as directors キャメラがあまり動かないので目で愉しむ映画ではない。おそろしくカメラの腰が重い作品である。『二番目のキス』、これはカメラの使い方も良かった。本作は全然重い。鈍い作品である。 目で楽しめないのであれば映画として…

The Black Dahlia(2006) - 違和感のある映画を観る。

Brian De Palma as director 映画として及第点は超えているには違いないのだけれど、どこかに違和感がある。それぞれのシークエンスにおけるスクリーンプレイが必ずしも的確ではない。また、原作にどれほど忠実に脚本を書いたかはさて置き、映画の展開として…

Stuck on You (2003) - ユーモアの偉大さを観る。

Farrelly brothers as directors 良作である。 「ギリーは首ったけ」と「2番目のキス」との中間にあたる本作は、結合双生児が主役になっている。動作によるユーモアと、台詞によるユーモアが、いかに映画に大切であることか。偏見というものが存在するとし…

Inland Empire (2006) - 女優は大変であった。Ⅱ

David Lynch as director 『マルホランド・ドライブ』ではハリウッドで活躍しようと頑張る新米女優が描かれた。本作では、一度は主演者が死んでお蔵入りとなったいわば魔性のスクリプトが登場する。 これに主演して返咲こうとするおそらくベテランの女優が主…

Hidden (2005) - 疚しさという感情の奔流を観る。

Michael Haneke監督。 日常と感情の複雑な絡みの中で、疚しさは人が皆持っている複雑な感情になっている。それを映画で表現したならばシンプルに抽出することができるのではないか。この作品は、隠されたものを明らかにするという動機で作られたとしよう。 …

Say It Isn't So (2001) - プロットの才能を観る。

J.B. Rogers 監督。 脳卒中で半身麻痺になっている人物が後半になると元気になり、変わりにその夫の妻(彼女は悪役である)が発作を起こして半身麻痺になる。主人公はsister fuckerであり変態であるといわれたが、後にその女は実の兄妹ではないことがわかる…

Underworld(2003) - SF映画は賞味期限がある。

Len Wiseman監督。 未知の感染症によって人類の統合性が失われていくのだと思いつつ、このような映画はだんだんと廃れていく直感はある。あまりにも続編を作りすぎた『バイオハザード』が終に終幕するとき、未知の感染症を主題とするSFも終了するのだ。とい…

Fever Pitch (2005) - たのしい恋愛映画を観る。

Bobby Farrelly, Peter Farrelly as director まじめな恋愛映画。二人が感情をすり合わせながら愛情を育む様子が丁寧に描かれている。そして、たかがゲームに対する男と女の一般的な感じ方の違いが、極めて鮮やかに描かれている。何に傷つき、何に価値観を置…